その雨が、太波乱をここまで呼んだのは歴史上でも珍しいレースであったのではないでしょうか。
現地時間14時(日本時間21時)からのレース。レギュレーションではレース開始3分前までに出走するタイヤを決定しなければなりません。各チームほとんどが使うのが難しいソフトタイヤを選びました。これは雨になると言われている天気予報を想定しての選択です。現在は気温21℃、路面温度30℃、湿度44%です。
フォーメーションラップで早くも雨がポツリポツリとして来ました。
そして波乱の幕開けのスタート!スタート直前から雨!そして、前が見えなくなるほどの豪雨となりました。
あちらこちらで接触の嵐!
全車、1LAPの終わりにはピットイン!その中でピットロードでスリップして、ライコネンがピットインに失敗(それ程の雨)もう1LAPするハメになりました。
1コーナー先で雨に強くないドライバーはプールのようなコースから脱落、グラベルへ1台、2台、合計6台が一斉にスリップして来ました。これは接触ではなく、自分でスリップして来たのです。
当然、ここはSC(セイフティーカー)の投入です。コース上はプールの様ですから、スタンダードウェットタイヤを履いたクルマは次々といろんなコーナーでスリップ。今度はみんな後半にピットに入って来たクルマはエクストリームウェットタイヤに履き替えます。

GPupdate"rain"
それでもバケツをひっくり返したというより、ナイアガラの滝のような雨にSCもストップ。4周目にやっと赤旗中断が宣告されました。
今年のレギュレーションから赤旗中断をしても計時は進み、2時間で、必ず終了する事が決まっています。(ところが、結局今回のレースは2時間を越えてもフルレースディスタンスを走りました。どうなってんのFIA?)約15分ぐらいの中断。
現在の表示上の順位は、1位ビンケルホック、2位マッサ、
3位アロンソ、4位ウェバー、5位クルサード、
6位コバライネン、7位ライコネン、8位ブルツ、
9位バリチェロ、10位フィジケラ、11位クビサ、
12位シューマッハ、13位佐藤琢磨、14位トゥルーリ、
15位ハイドフェルド、16位デビッドソン、17位ハミルトン
となっています。
バトン、スーティル、ロズベルグ、スピード、リウッツィがリタイアしてしまいました。
中断すると何故か打ち合わせていたかのように雨が止みました。そして、薄日が差し始めます。やがて晴天へ。これぞニュルウェザーです。
現地時間14時35分に再開のFIAからの表示が出ましたが、各チームの天気予報はその時間から雨の再開です。
SC先導の下、レースが再開されました。ピットレーンもオープンになります。6周目。デビッドソンはエキストリームからスタンダードウェットへ履き替える中、ハミルトンがドライタイヤへ履き替えます!失うもののないハミルトンは勝負に出ました!
7周目にやっとSCがピットへ。再スタートGO!
コース上は抜きつ抜かれつの大混乱で順位がどうなっているのかわかりません。ドライバーも「自分が今何位なのか?」という無線がスタッフと交わされます。
8周目。順位は、マッサ、アロンソ、クルサード、ウェバー、コバライネン、ライコネン、ブルツ、ビンケルホック、バリチェロ、フィジケラ、クビサ、シューマッハ、佐藤琢磨、ハイドフェルド、トゥルーリ、デビッドソン、ハミルトンの順になっています。(ビデオを何回も何回も巻き戻して確認しました)
11周目くらいから、各車がドライタイヤに履き替え始めます。でも、ハミルトンのタイムを見るとドライは微妙です。
20周目シューマッハとハイドフェルドが接触。シューマッハだけがリタイアとなります。同じ周回で、原因不明ですが、佐藤琢磨がグラベルでストップしています。リタイアです。
30周前後になると、残り最後の燃料を積みに各車ピットインが始まりました。
27周目にルノーのコバライネンが給油しますが、フルコースディスタンス分の給油ではなく、2時間ルール分の給油をしました。しかし、30周目に入って来たルノーのフィジケラはフルコースディスタンス分を給油をします。同一チーム内でも混乱が生じています。
またまた、重いクルマと軽いクルマとでオーバーテイクショーが始まりました。特にハミルトンの鬼神の走りはものすごいものがあります。
35周目、なんと我らがライコネンがストップしました!急にスローダウンしては、またスピードが戻ったりしながらピットまでようやく到着しますが、そのままリタイアします。ライコネンはどうもこのニュルブルクリンクとは相性が悪いようで、いつもマクラーレン時代からリタイアし通しです。
35周後の順位は、マッサ、アロンソ、ウェバー、ブルツ、コバライネン、クルサード、クビサ、ハイドフェルドが入賞圏内を走っています。
ここでFIAから「7分後に雨」という予報が流されます。
残り10周でルノーのコバライネンが残りのディスタンス分の給油と何と!スタンダードウェットタイヤを履きます。「ギャンブルだ!」と無線でさかんに言っています。
次の周回で本当に雨が降り出します。また、上位陣からピットインショーの始まりです。
ウェットタイヤの最初2周くらいが速いマクラーレンのアロンソが、その短いチャンスを使って、マッサを抜きにかかります。
残り5周目。アロンソがマッサをコース上でオーバーテイクしました。ライコネンのリタイアに引き続きティフォジの私としては、がっかりです↓
これが最後のショータイムでした。このままチェッカーフラッグを受けます。
1位アロンソ(マクラーレン)2hr6'26"358
2位マッサ(フェラーリ)+0'08"155
3位ウェバー(レッドブル)+1'05"674
4位ブルツ(ウィリアムズ)+1'05"937
5位クルサード(レッドブル)+1'13"656
6位ハイドフェルド(BMW)+1'20"298
7位クビサ(BMW)+1'22"415
8位コバライネン(ルノー)1LAP
9位ハミルトン(マクラーレン)1LAP
10位フィジケラ(ルノー)1LAP
11位バリチェロ(ホンダ)1LAP
12位デビッドソン(スーパーアグリ)1LAP
13位トゥルーリ(トヨタ)1LAP
9台がリタイアとなりました。
レース後パルクフェルメでアロンソが自分のクルマの脇に付いた大きな傷を指差し、”これはないよな”といった感じで、指を左右に振る場面が映し出されました。その後、体重測定のところでマッサが猛抗議。何故かは後のインタビューで明らかになります。
表彰台には珍しくロン・デニスがマクラーレンのコンストラクターズとして上がりました。そこのプレゼンターに現れたのは何とミハエル・シューマッハというのが笑えました。ロンは”あっち行け”とばかりにミハエルに手を振って追い出そうとしていました。

GPupdate"Podium"
レッドブルのピットではお客様にあの映画監督タランティーノが来ていました。レッドブルは映画がらみの事があると成績が良いですかね??
レース直後のインタビュー
アロンソ
「エキサイティングなレースでした。最初の3周は大変な事だった。最後の雨の6ラップで助けられたし、その頃はウチの方がパフォーマンスが上だった。マッサとは、その間で2回接触した。」
マッサ
「スタートは良かった。アロンソを抜いたし、雨でキミがピットに入って来なかったのでトップになれた。」
○クルマから出た時つまらなそうな感じだったが?と聞かれ
「フェルナンド(アロンソ)から”故意にぶつけただろ”と言われてビックリしたから。」
ウェバー
「スタートでBMWと接触して、クルマをコントロールするので必死だった。最後もまた雨が降ってきて”マサカ!”と思った。とにかく、ポイントを稼がなきゃと思って必死に走った。」
フェラーリとマクラーレンの接触について二人のコメントです。
マッサ
「ドライではクルマは非常に調子が良かったよ。差を広げてペースをコントロールしたけれど、残念ながらそこで雨が降ってきてしまったんだ。僕はペースを失い、フェルナンドが次第に接近してきたので彼を抑えることができなかった。アロンソが僕にあんなこと(アロンソのサイドポッドにタイヤをぶつけたこと)をしただろって言ってきたからビックリしてしまい、彼に怒ってしまったんだ。もし彼がこの件について不満でも、僕の知ったことじゃないよ」
アロンソ
「レースはとても接近していて、ドライのライン、つまりレーシングラインが乾き始めていた。僕たちは2回接触していたんだ。僕たちはもう少しで2人ともリタイヤするところだったから、あとでマッサに謝ったよ。今はすべてを忘れてこの勝利を楽しみたいね。」
最後にテレビの解説に珍しく、ブリジストンの浜島さんがコメントしていたので、かいつまんでマクラーレン、フェラーリの2強について書きます。
「フェラーリが完全に復活した。前2回のフランス、イギリスは平らなコースだったが、今回は違うのに良いパフォーマンスを見せている。」
それと、2強の課題については
「フェラーリは信頼性。マクラーレンはタイヤに優しい走りが出来るようになることでしょう。ハンガリーGPでは再びスーパーソフトが出て来るので、フェラーリはどう使うのか、マクラーレンはどうもたせるのかを考えなくてはいけません。」
最後に私個人のコメント。今日のレースは雨でどのチームもドライバーも自分のポテンシャルを発揮できなかったと思います。
でも、フェラーリもマクラーレンもクルマの信頼性に問題がありました。これは雨と関係ないと思いますので、修正が必要だと思います。
ハンガリーは超低速サーキットです。こういうところはミハエルは別格としてフェラーリも弱いコースです。必死にならないと去年のようにホンダが40年ぶりの優勝などという事になります。
日本人としては大感激でしたので、再びあの君が代を聞かせてほしいですが、フェラーリファンとしては、ここで踏ん張らないとチャンピオンシップポイントでどんどんマクラーレンに置いていかれます。
次はフェラーリ1−2フィニッシュを見せて欲しいし、そうでないと後半戦が危なくなって来てしまうと思います。
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